我々は「低炭素化→有機反応溶媒(特に化石燃料由来の不再生溶媒)の排除」を志向したものづくりを率先して推進し、持続可能な産業基盤材料の創生を目指しています。環境破壊や資源枯渇などグローバルな課題の克服に、基礎研究レベルから出口戦略(ものづくり→産業応用)までを総合的にイメージした取り組みを進めています。なかなかその実感がわかないところですが、研究室レベルから(小規模合成の段階から)、大量消費・大量浪費型ものづくりを脱却することを我々はその第一の出口戦略に掲げています。産業応用にも許容される材料とそのものづくりの方法を、限られた資源から創意工夫で生み出すことが、基礎化学を担う我々の社会貢献に繋がる一つの使命でもあると考えます。

 金属ナノ粒子 Metal Nanoparticles 

 
 金属ナノ粒子は、バルク(皆さんが目で見ている大きな状態)とは異なる機能を発現することが知られている。たとえば、金や銀はナノサイズ化することで、それぞれ赤や黄に呈色する。また、融点が室温まで低下するという特徴を有する。 金属ナノ粒子が安定に溶媒に分散した溶液(インク)を用いることで、印刷技術を用いた微細配線作製や、光学材料への応用など汎用性の高い材料となる。 当研究室では、銀ナノ粒子の大量・簡便・高収率な新規手法を開発し、付加価値の高い機能性銀ナノインクの調製と、それを用いたデバイス作製を進めております。 また、銀ナノ粒子だけでなく、銅銀合金ナノ粒子や銅ナノ粒子の合成も進め、社会に貢献できる技術の確立を目指しております。 

プルシアンブルー Prussian Blue


 プ ルシアンブルー(PB)は、三世紀ほど前(1704年)のドイツ(当時のプロシア)で偶然に発見された青の人工顔料(PB pigment)です。近年、電子機能性材料、プロトン伝導体など多機能性材料として注目されています。 当研究室では、PBがナノ粒子あることに注目し、表面改質による溶媒への高濃度分散化に成功しております。この分散液を用いた薄膜作成およびその評価を進め、PBのさらなる高機能化・新規機能発現を目指しております。 表面および内部の構造を制御することで、放射性セシウム吸着材利用を目指したイオン吸着特性制御、または、固体電解質応用を目指したプロトン伝導能の向上など、多方面にわたる機能評価を進めております。

炭素系材料への機能付加 Carbon materials

 カーボンナノチューブやフラーレンなどの炭素材料は、導電性材料、電極材料、光デバイスなど多方面への応用が期待されている高機能性材料である。これら材料は、原子配置(炭素の次元性)や多種元素をドープすることで大きく機能が変化する。当研究室では錯体化学やナノ材料科学の知見をもとに、新たな炭素系材料、または他元素ドープ炭素系材料の合成を行い、新たな機能材料の開発を進めております。
理学部 研究ニュース https://www.sci.yamagata-u.ac.jp/news/detail/714/

透明導電膜 Transparent conductive film

 透明導電膜作製のための低温で焼結する酸化物ナノ微粒子インクの調製を行っております。また、溶液塗布法と前駆体分解法を組み合わせた湿式法による無機材料を用いた透明導電膜およびp-およびn-型半導体膜の作製を行っております。太陽電池などエネルギーデバイスには欠かせない技術の確立を目指しております。

触媒評価 Catalysis

 触媒は低エネルギー・高効率に目的物を得るために必要な機能性材料である。そのため、その応用例は多岐にわたり、様々な物質を触媒とした種々の反応が報告されている。本研究室では、銅ナノ粒子の電気化学的二酸化炭素還元触媒能評価やプルシアンブルーを用いた電気化学的水酸化触媒能評価など、当研究室で合成した各種機能性材料の触媒能について評価を行っております。